食べられる幸せ

中学時代からの付き合いがある女友達が某大手食品メーカーで働いている。
板チョコレートといえばこのメーカーというほど有名な会社だが、友人がいるのはお菓子部門ではなく病院食部門だ。
そういった商品を作っていることすら知らなかった。

友達は病院向けに流動食を営業する部署にいて、大学病院や総合病院の先生に売り込みに行っているそうだ。
病院関係の営業は本当に大変だと聞くが、女性の営業だともっと大変らしい。
夜飲みに行ったときに話を聞こうと言われ、上司と接待を組んでも、二軒目は上司は帰らされるらしい。

変な関係にならないようにしながら売り込みをするのは苦労するそうだ。
そんな友人が苦労しながら営業している流動食は、咀嚼ができない患者の唯一の栄養源。
それを元に元気になっていく患者さんがいるのであれば、苦労して営業する甲斐もあると奮闘しているそうだ。

病院向けだけではなく、摂食障害からの復帰を目指す自宅療養中の患者用の食べ物も最近は需要が増えているらしい。
何度も咀嚼しなくても食べられるように柔らかくしてある食事で、病気でも美味しい物を食べたいという願いを叶えるために味にこだわったものが増えているんだとか。

営業している友人が言うには、食べられるというのは本当に幸せなことで、生きる希望になり、病気の治りも早くなる人が多いらしい。
食べられなくなることを想像したことがないが、料理を三食作り、食べられることをありがたいと思わなければならない。

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