何をもって社会の勝ち組なのか
ハワイ銀行では案外と手間取ったものの、無事姉からの送金を受け取った。
銀行職員と大使館職員というこれ以上ないくらい堅苦しくも有能な人たちの尽力により、わたしの自由なひとり旅は継続可能となった。
「民間人1名の安全確保」ってわけですね!と彼らに言えば、さすがに袋叩きとなりましょう。
能天気な感じで彼らに挨拶すると、わたしは立ち去る。
てっきり車で宿まで送ってもらえると思っていたわたしは、さらに目出度い。
お助けチーム解散か……。
行くあてもなくダウンダウンの街へと歩き出すわたし。
努めて軽快な足取りで信号を渡りきると、思った通り見送ってくれていた彼らに、振り返り手を振る。
明らかにホッとした様子の彼らの顔、姿。
彼らと比したわたしは、貧乏でハタ迷惑な女の子に過ぎない。
その頼りなげで愚かな背中が、二人の目にくっきりと映っていることでしょう。
彼らとひきかえ、このわたしは今日、社会のため人のために何をしただろう?惨めな思いを噛みしめながら、うつむきエリートと言われる人たちの人生について、常夏の島ハワイでしばし思いを巡らせる。
ダウンタウンのベンチに力なく座ると、姉の送金してくれた金額をやっと確認。
ホテルの宿泊料を支払うといくらも手元には残らないだろう。
貧乏な兄夫婦が懸命に捻出してくれただろうお金。
さっきまで感じていた、非常事態特有の高揚した気分はどこへやら。
ただただ萎れうなだれた。
気を取り直して行先確認のうえバスに乗り込み、ホテルへ直行。
途中、ハワイのコンビニともいえるABCストアで、なけなしの食糧を買う。
せめて、もうちょっと送金してよね…。
帰国してのちに姉にそう尋ねると、送金手数料を差し引かれるなど思いもよらなかったとのことだった。
「だって~。
困ってる人からそういうの取る?大使館だって結局は税金で運営されてるんでしょう?」
こういうスタンスで生きている人と、ああいうスタンスで生きている人たち。
両者を世間ではこう呼ぶのかもしれない。
勝ち組・負け組。
並び順は逆ながらも。