価値観

実家にいるときから、口癖は「引越したい」だった。
綺麗ではない家で暮らしていることを苦痛に感じていた。
家にお金を入れているのに、これで家が綺麗になるわけではない。
ただただ、食費や光熱費として消えていくことが嫌だった。

必死で10ヶ月で70万円貯めた。
この間、洋服を買ったり飲み会に行くことなく、貯金だけを考えていた。
このお金を持って家を出て一人暮らしを始めた。

一人になると、あれこれ支払いが増えていくが、それでも私は実家を出て正解だったと今でも思う。
ただ、若い女の子で同じように実家を出たいという意見を聞くと、「家にいれるならいたほうがいいよ」と、自分とは全く違うアドバイスをしている。
私はとにかく実家が狭くて古かった。

片付けられない性格の母親に我慢ができなかった。
数え切れないほどの回数、大掃除をして、その間いろいろなものを捨てた。
母親が全く使っていない不要だろうと思われるものもたくさん処分したが、そのたびに不機嫌そうだった。

自分が捨てられないことを指摘されているのが嫌だったのだろう。
私はこのような状態だったので出てきて正解だったが、実家が大きな家で、親がある程度裕福ならば、甘えさせてもらう気持ちで無理して一人暮らしをする必要はないよと若いコに話している。

当然、お金は家に入れるように言うが、その何倍も一人暮らしだとお金がかかる。
実家が良い家なら、それを出て行くのはもったいないと私は羨ましくおもいつつ、アドバイスをするのだ。

引越し料金について

私の家は職場から電車で一時間半も掛かる。

お金が貯まったら、もう少し近いところに引越したい。
ぎゅうぎゅうでない電車で、職場からほんの数駅くらいの。
是非フロトイレ付きの物件がよいのだが…。

父の言葉

今は亡き私の父は、まるで少年がそのまま大人になったかのような父親でした。
よく言えば寛容ではありましたが悪く言うと無責任とも思え、話しやすい父親ではありましたが困らされたことも一度や二度ではありませんでした。

さて大学進学の折、一人暮らしすることとなった私は業者に頼むようなことはせずに家族の助けを得て引っ越しすることとなりました。
というのも引っ越すといっても同じ県内でありさほど労力がかからなかったからなのです。
それでも引っ越しには父の運転する車で荷物を運ぶために何回か実家と下宿先を往復する必要があったのですが、珍しく父と二人っきりだったときのことです。
普段は飄々とした態度で本心を悟らせなかった父ですが、何か思うところがあったのかその時だけは本心のようなものを口にしてくれました。
当時五十を過ぎたばかりだった父が、「この年になって若いころから何か目標を立ててなければいけなかったことが分かった」、と口にしたのです。
それは父の本心だったのか、あるいは大学進学を控えた私に発破をかけたかったのか、父が亡くなってしまった今となってはうかがい知ることも出来ません。
またこの言葉は、文面こそ違うものの格言にある「少年よ大志を抱け」という言葉と同じ意味であることは間違いありません。
正直なところを言えば弱音を見せなかった父からそんな言葉を聞いたのはショックではありました。
ですが、おそらく父自身の本心がこもったこの言葉はその甲斐あってか今でも胸に残っているのであります。
大志を抱けている、と言える自信はまだありませんが父のこの言葉は一生忘れることはないでしょう。

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