旅慣れたツーリスト
「見て見て!あの人ってひとり旅じゃない?ハワイひとり旅かあ~かっこいい!」
二度目のハワイひとり旅。旅慣れたわたしを、通りすがりの日本からきたらしい女の子たちが遠巻きに噂しているのが耳に入った。
いつもなら、彼女たちの瞳に映った自分へのプラスの評価を聞き逃すまいとして、わたしは懸命に聞き耳をたてる。
その内心、タイミングよく誰かガイジンが話しかけてくれないかと気配を探る。
話しかけられたら、こう言おう。物馴れた風情でこういうのだ。
Thank you, have a nice day…(笑顔)
逆になにか言われた場合には、ジャストこう返す。Thank you. you too!
なにがYou too なのか?という会話のケースもこれでOK!
旅慣れたツーリストたる証は、手短な会話と笑顔。
日本でのわたしは自意識過剰で、周囲からしばしばこう言われてしまう。
「緊張感、ハンパないっすね!」
「ちょっと一杯ひっかけて仕事に来たらどう?」
ハワイの温暖な気候とおおらかな風がわたしの体質までをも変えてしまう。軟体動物のように寛いだ体。ダランと投げ出して然るべき姿勢。
リラックスしきった表情は、我ながら現地人か、すっかり旅慣れたツーリストというとこ。
欧米人たちが、通りすがりにニコッとしてくれるのって好きだな。ドアーを次の人のために開けるマナーも二日目からはすっかり自分の動作となっている。
誰もわたしのバックグランドなんか知りはしない。
そう!わたしはひとり。所属する組織を背負ってもなければ、出身校や家族も関係なし。ただただその場で感じがいいか。
相手の瞳や表情に映し出されるその場限りの自分を確認していけばいいだけ。それだけをひたすら命題とする旅の日々。