行きつけのお店

初めてそのお店に行ったのは、1年前の3月。
ビルの入り口に小さく書かれた「日替わりランチ 自家製ハンバーグ」の文字に惹かれて、お店の扉を開けました。

地下にあるそのお店は、外に大きな看板などもなく、なかなか気づかれない雰囲気のいわゆる隠れ家的存在。
優しそうなオーナーシェフと気さくなウエイターの二人が、「いらっしゃいませ」と出迎えてくれ、私はお店が見渡せる一番奥の席に座りました。
10名ほどで満席になってしまう小さなお店。

店内は赤茶色の塗り壁にこげ茶の椅子とテーブル、余計な装飾はなにもなく、少し寂しい感じがするとさえ思いました。
少し待つと、注文したハンバーグが目の前に出され、私はその瞬間に、このお店が寂しくなんてなくて、とても素敵だったんだと感じました。

真っ白な大き目の皿に和風のハンバーグと色鮮やかなサラダが盛り付けられていて、シンプルな内装にとても映えるのです。
そして一口食べて、その味にも魅了されてしまいました。

これまでに食べたことがない味と言っても過言ではないほどの美味しさで、スープもご飯も夢中で食べてしまいました。
あまりに感動したので、食後のコーヒーを注文した際に「とても美味しかったです。

ここのお店のファンになりそうです。」と言ったところ、「そういっていただけて光栄です。
ぜひ、またいらしてくださいね」と応えてくれました。
それからというもの、週に1度はその店に通うようになり、カウンター席でシェフやウェイターとおしゃべりを楽しむ事も多くなりました。

学生の頃憧れていた「行きつけのお店」というのは、こうやって出来るのだなと大人になった事に実感しているのです。

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