数学の熱い先生
ことごとく文系気質の私は小学生の頃の算数から大の苦手だった。
中学三年になると、公立高校試験の対策として、試験問題を毎日のように解いていくようになる。
60点の5教科で300満点の中で、各学校の合格ラインが引かれていた。
国語、英語、社会はいつもほぼ満点。
理科は40点台後半、そして数学は20点台がザラだった。
もう数学は捨てろ、と担任にも言われていたぐらい諦めていた。
そんな状態で志望校になんとか合格したものの、当然高校でも数学の授業で悪銭苦闘した。
しかし高校二年になったときに、とても熱血指導の数学の先生に出会って、少し考え方が変わった。
女性の20代の数学教師は、生徒指導部でもあったので、とても厳しかった。
みんな苦手だと思っていたが、授業では脱落者を絶対に出さないという指導をしていた。
高校の数学は驚くほどスピードが速い。
私のようなぎりぎりで高校に入ったものにとっては地獄の時間だった。
しかし、この女性の先生の教え方は、これまで聞いたことのない、新しい考え方を示すことが多くて、分かりやすかった。
「一旦、考え方をリセットしましょう」が口癖で、中学までの高校受験対策の詰め込み式で固まった私たちの頭をほぐしてくれた。
教科書には載っていない、先生独自の考え方を教えてくれて、「なんだ、こんなに簡単だったのか」と思わせてくれたのだ。
一年生のときはベテランの50代の男性教諭が担当だった。
ベテランだからこそ、教える方もマンネリ化していたのだろう。
若い女性の先生は、ベテランの先生とは全く違うアプローチでも良いから、私たちが理解できるように丁寧に教えてくれた。
数学が苦手な私のような生徒が理解すると先生はとても嬉しそうだった。
今でも授業は忘れられない思い出だ。